きっかけ



「私にはパンの道しかない。」
そう強く思い始めたのは高校2年生の時、
友達の紹介で入ったバイト先の店長の言葉で
自分の中の本当の気持ちを許せたことが
きっかけでした。



私は小さい頃から、人見知りで、大人しい、
何考えてるのかよく分からない、やる気がない
そんなイメージを持たれがちの子でした。

こんなにも怖がりで、無知で、
大人になったら自分はどうなるのか不安だった。
でも何かやってみたい気持ちは
喉の奥につっかえるほど熱く中にあって。

私はどんな風に生きていくんだろう。
何をすればこの気持ちは伝わるんだろう。
どうやったら自分を変えられるんだろう。
誰かと心の中を入れ替えられたら伝わるのに。
いつも、そんなことばかり考えて、
周りの人の話が耳に入ってこず上の空。
いつの間にか傍に居てくれる人も減って。

父親が教えてくれたスポーツや運動も
母親がサポートしてくれた友達付き合いも
どれも上手くできなかった。
家族でさえ、年下の妹や弟でさえ、
キラキラ眩しくて、遠い存在に見えた。

自分で自分が恥ずかしい。
思っている熱い気持ちも何も言葉にできない。
自分の気持ちに自信がないから
大切な気持ちを否定されるのも怖いから
何も声を発せないまま。

変わりたい変わりたいって
思ってばかりで、何も行動できなくて。
泣いてばっかり。
どんどん自分のことが嫌いになっていた。



それが高校2年の時に働いたバイト先の
ベーカリーレストランで
素晴らしい店長に出会い
私の中で何かが変わり始めました。

その店長は
子供な無邪気さも兼ね備えながら
指示も的確で、何人分も働き、
前を行く後ろ姿は目で追えない程だった。
1人で店の全てを見て、いつも
お客様や従業員の次の行動を予測し、
どうやったらお客様が喜ぶか
従業員を奮い立たせられるか
そのことに全身駆使されているように感じた。

「はじめて描いた夢はなに?」
寄り添って声をかけてくれた
そんな質問にも、その頃の私は
パン屋さんを開きたいとさえ言えず

「でも私は不器用だし、熱い物苦手だし
お菓子作りも苦手だから何も無理なんです」
そんな風にネガティブな言葉ばかりでしか
答えられなかった私に、
「どんなことでも誰でも毎日続けたら
必ず、出来るようになるよ!」と話してくれた。

その言葉達は無知すぎる私の身体中に響き渡り
私の中で何かががらりと変わった。
自分の中の熱い気持ちに気付いて
もう熱を止められなくなった。

その後、私は馬鹿みたいに
毎日学校とバイトの後家に帰って
深夜から朝までパンを焼き続けた。
とにかく全て毎日続けること
私にはそれしか出来ない!と

パン職人はガタイの良い男性のイメージがあったからか
何故かとにかく腕立て腹筋背筋...
知りうる限りの筋トレをして
体力をつけるように電車やバスを避けて
徒歩や自転車で1時間以上かけて
高校が休みの日もバイト先へ通ったり
無我夢中で少しでも前に進みたくて必死だった。

毎日のようにパンと言えないような変なパンを焼き
朝起きたら散らかったキッチン...
母にも申し訳なかったと、母になって気づきました。

そしてほとんど寝ずに高校へ向かい
授業中もただただ焦っていた。

今こうして授業を受けている間も
パンの専門学校へ行ってる人や
パン職人として働いている人は
どんどん先へ進んで行ってしまう。
パンの色んなことを知っていくんだろうな...
置いていかれたくない...追いつかなくちゃ
そんなことばかりが頭の中を渦巻いて

経営の勉強の為にと選択していた簿記の授業以外
授業にも集中出来なくなってしまい、
授業中は教科書の中に潜めたパンの本を読んで、
寝れる授業は寝てパン作りのための体力を蓄えた

バイト中は、
とてつもなく忙しいオペレーションの中でも、
どうやったらお客様に喜んでもらえるか
どうやったら最高のひとときを創造できるか
水を飲むのも忘れて、がむしゃらに走り回り
そのことだけをただただいつも真剣に考えていた

がむしゃらに必死に追いかけた背中
弱気で怖がりだった私が
気が付いたらこなせるようになっていた
朝から晩まで、何時間も止まらない
過酷なオペレーション
全身爪の先まで集中していた。


「今この瞬間はもう過去であること
未来を見ること」
「変わることと成長することは違う
自分を変えようと思わなくていいよ
成長していけばいいんだよ」
そんなたくさんの言葉をかけてくれ
思春期の私たちにまっすぐ向き合ってくれた
そんな店長に出会えたことが

私が夢を叶えたいと思い続けられたきっかけ、
今でも前に進みたいと思う原動力です。

他にも、先輩や従業員の方々
紹介してくれた友人
たくさんの人の言葉に心温められて
私は私を解き放てた。
今でもその一時、分かりにくい私を
気にかけ、必要としてくれた
たくさんの声や愛は前を向く自信になっています。


きっとまだ夢を叶えた実感がないのは
心の底から胸張って報告出来ないのは
そんな人たちに頂いた言葉でしか
自分を奮い立たせられていないからなのかなと
最近思うようになりました。

ちゃんと自分の足で立って、
次は私が、誰かにそんなきっかけや
自信を与えられる人にならなくてはと思います。

私は、本気でパンを作ることは勿論
人の心をほんの少しでも満たせるような
そんな何かを創れるような人になりたい。
その何かを今も模索しています。

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